【まとめ】わかる!STEAM教育(スティーム教育)。世界に広がる新しい学びの方法

【まとめ】わかる!STEAM教育(スティーム教育)。世界に広がる新しい学びの方法
【まとめ】わかる!STEAM教育(スティーム教育)。世界に広がる新しい学びの方法
  • STEAM教育ってどんな教育?
  • STEAM教育は受けた方がいいの?
  • 日本の学校教育とどんな関係があるの?

こういった疑問に答えます。

最近STEAM教育という言葉を耳にするようになりました。その言葉が科学、技術、工学、アート、数学の5つの領域の頭文字というのは検索すればすぐに分かります。でもその5つを学ぶことで何が変わるのかがいまいちピンとこないという方もいるのではないでしょうか。


そこでこの記事では、STEAM教育を受けるとどうなるのか?を中心に解説します。

この記事を読むことで、STEAM教育に対する意識が変わり、子どもの教育への向き合い方が変わることと思います。




1.STEAM教育は「人の生活を豊かにする思考」を学ぶ教育

【まとめ】わかる!STEAM教育(スティーム教育)。世界に広がる新しい学びの方法

STEAMとは、
  • 科学(Science)
  • 技術(Technology)
  • 工学(Engineering)
  • アート(Arts)
  • 数学(Mathematics)

という5つの領域の頭文字を取った造語。

STEAM教育とは、人間の仕事の多くをAIやロボットが担うことになる時代に、テクノロジーを使いこなすだけでなくクリエイティブな発想をも駆使して、社会の為に、人類の為に役に立ち、人の生活を豊かにしていくという考え方を学ぶ教育です。


今までの教育システム(系統学習型教育)

・工業立国を目指す

・ものづくりに資本や人材を集中

・学習指導要領に基づいて、基礎知識をきっちりと習得させていくシステム。

・系統立てて配置された学習内容を、順番に学習していく


これからの教育システム(STEAM教育)

・現代は高度な知識労働が重要

・大量のデジタル情報を効率よくマネジメントするスキルが必要

・自由に発想し(前例のない問題)に創意工夫で解を見いだす能力が必要

・生徒が主体となって積極的に問題解決し、必ずしも明瞭な解答の出ない状況にも対応するための学習トレーニングが必要。

・斬新な解決案や多様なオプションを考える力を伸ばし、実社会での即戦力として育てる。



日本におけるSTEAM教育については、「STEAM教育の学校教育での展開について。文部科学省の新学習指導要領との関係についても解説」で詳しく解説しています。



2.STEM教育からSTEAM教育へ進化

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「STEAM教育」の前身として「STEM教育」があります。STEMはSTEAMの「A(アート)」が含まれていないものです。21世紀に入った頃から議論が活発化してきました。
STEM教育は、科学・技術・工学・数学の教育に力を注ぎ、科学技術のリテラシーを高めて実社会に応用できる人材を育てることを目的としたものです。

STEM教育が急速に広まってきた背景には、国際学力調査「PISA(ピザ)」と「TIMSS(ティムズ)」の存在があります。
PISA(生徒の学習到達度調査)
読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野で調査。 また、上記に加えて、問題解決能力、協同問題解決能力、グローバル・コンピテンスといった新しい分野も測定の対象となりました。
2000年から3年ごとに実施。
TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)
初等中等教育段階における児童・生徒の算数・数学及び理科の教育到達度を国際的な尺度によって測定し、児童・生徒の学習環境条件等の諸要因との関係を分析する。
1964年から実施。1995年からは4年ごとに実施。

この調査の影響で、各国で科学技術リテラシーの向上を国家戦略とする動きが広まりました。

アメリカはこの調査で、他国に大きく遅れをとっていました。
そこで「STEM教育」という言葉を用いて国家戦略として取り組むことになりました。

当時のオバマ大統領は2011年の一般教書演説で、STEM教育の国家戦略として「2021年までにSTEM分野の教師を10万人養成」など具体的な目標を掲げ、2013年には国民に向けてビデオメッセージを発信したことで「STEM教育」は一気に浸透していきました。


2013年「STEM教育」が広まりを見せている中、「STEM教育」にさらなる新しい要素を取り入れた「STEAM教育」の概念が、これからの人材育成の鍵を握るという考え方が少しずつ広まってきます。
実は、「STEAM」という言葉は、2人の提唱者がいます。そして2人のSTEAMに対する考え方は違います。

ヤックマンのSTEAMの「A」はリベラルアーツ

一番最初に「STEAM」を提唱したのは、元デザイナーで技術科教員かつ当時バージニア工科大学の大学院生だったジョーゼット・ヤックマンでした。ヤックマンは、オバマ政権発足前の2006年にはSTEAMの概念を提唱してました。
ヤックマンのSTEAMは、科学と技術は、工学とリベラルアーツ(Liveral Arts)から解釈される「教科の分断をなくした全人教育」を目標に提唱されたものでした。ヤックマンの言う「A」とは、リベラルアーツの「Arts」のことであり、自由人として生きるための技をSTEMに加えてSTEAMにしたものでした。




・ジョン・マエダのSTEAMの「A」はアート

「STEAM」の重要性を全米に認知させたのは、全米きっての美術大学「ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)」の学長で、デザインとテクノロジーの融合を追求する第一人者ジョン・マエダ(MIT卒、筑波大学卒)でした。ジョン・マエダは、「STEMからSTEAMへ」運動を推進し、アメリカの教育界に大きな影響を与えました。
ジョン・マエダは、「STEM」に「Art」「Design」の意味の「A」を統合し「STEAM」を提唱しました。

こうしてSTEAM教育は、世界中に広がりつつあります。


3.STEAM教育を受けた人は世界を変える

【まとめ】わかる!STEAM教育(スティーム教育)。世界に広がる新しい学びの方法

STEAM教育を受けた人達は、これまで関連性が低いとされてきた複数の領域を繋いで、様々なものを活性化させようとする姿勢が身につくようになります。
また、未完成であることに対して包容力が高いです。


STEAM教育を受けた人の3つの特徴

1.社会の役に立つという思想を持っている
2.イノベーターのマインドセットを持っている
3.デザイン思考を持っている



社会の役に立つという思想を持っている

【まとめ】わかる!STEAM教育(スティーム教育)。世界に広がる新しい学びの方法
STEAM教育を受けた人は、人の役に立ちたいという思考を持ちます。
これは、人間性を重視する思考に基づきます。
「こんな技術があるからコレを作る」ではなく、「コレを作ると私たちの生活が豊かになれる」という発想からプロダクトやサービスを生み出していくのがSTEAM教育を受けた人の考え方になります。
そうして生まれたプロダクトやサービスはサステナブル(持続可能な)発展モデルとなっていきます。


イノベーターのマインドセットを持っている

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STEAM教育を受けた人達には、イノベーターとして共通のマインドセット(無意識の思考、クセ、行動パターン)を持っています。


①型にはまらない

社会的な常識や価値観にとらわれない自由な発想を持っています。


②ひとまずやってみる

スピード感を持って、発想を行動に変えていく態度をもっています。


③失敗して前進する

とりあえずやってみて、失敗して、そして前進する。というスピリットを持っています。
失敗を誇りにするマインドセットを持ち合わせています。



デザイン思考を持っている

【まとめ】わかる!STEAM教育(スティーム教育)。世界に広がる新しい学びの方法
STEAM教育を受けた人達には、デザイン思考に必要な、ユーザーの気持ちや感じ方に寄り添う姿勢を持っています。 そして、デザイン思考という、実用化できる思いがけない発想を生み出すトレーニングを常に行なっています。
徹底的にユーザー視点に立って生み出したものは、多くの人々にとってもよいものである可能性を秘めており、市場汎用性のあるイノベーションにつながる可能性があるわけです。


下記の動画で紹介されている女子生徒は、STEAM教育を受けた人が持ち合わせる特徴を持ってます。 人の役に立つものを作りたいと、熱い思いで専門性を発揮し、斬新な発想と行動力で社会活動に貢献する姿勢は、まさに次世代の社会を牽引する人材といえます。



4.STEAM教育の5つの特徴

【まとめ】わかる!STEAM教育(スティーム教育)。世界に広がる新しい学びの方法


能動的な学びのモデル

STEAM教育は、人間の潜在力を伸ばすことを目的にしてます。 自ら問題を発見・設定し、思考錯誤しながら解決していく能動的な学びのモデルです。


複数の領域を融合して考える

STEAM教育は、複数の領域を融合して考えようとする、高次元の教育アプローチです。 違う科目や異なる分野でも、各科目の中で学ぶ内容を精査し、互いに呼応できそうな要素があれば抽出し上手に関連させて教えます。 シナジー効果が期待できます。


主体は児童や生徒たち

STEAM教育の主体は、児童や生徒たちです。
そして、学びの場は、教室に限定されません。
従来の系統学習型
教師、教室が学習現場の中心

新しい教育
生徒が学習現場の中心


プロジェクト学習がベース

STEAMを重視した教育現場は、プロジェクト学習がベースとなります。
オンライン教育ツールなどを最大限活用して、学生が自ら積極的に情報を収集し、考え、問題解決を行うような指導がされます。
また、様々な領域を融合させ、議題に多角的にアプローチすることで、学習者は学び方が一つでないことを体感します。


自分は「社会を変える力がある」という自信を与える

STEAM教育は、子ども達に「自分たちは社会を変える力がある」という自信を与えます。 実社会の問題を解決していくという教育モデルですから、学習の先には、常に、実現すべき「よりよい社会」をビジョンとして持ち合わせるようになります。


5.STEAM教育に必要な学習法

【まとめ】わかる!STEAM教育(スティーム教育)。世界に広がる新しい学びの方法
STEAMを体現できる人材を育成していくには、従来の系統学習ではなく、生徒が主体となって積極的に問題解決をし必ずしも明瞭な答えの出ない状況にも対応できるための学習トレーニングが必要となります。 下記の3つの学習法は、どれも、教師が講義を行う「指導型」ではなく、生徒が主体となって自ら問題解決する「探求型」の学びです。


2つのPBL学習で能動的に学ぶ

PBLは、知識を詰め込むだけの受け身な学習方法ではなく、学習者が自ら課題や問題を発見し、解決することを重視した能動的学習方法です。PBLには2つの種類があります。学校で学んだ知識を、社会見学や実験で検証し、グループ発表などでアウトプットするという流れは、新しい学習指導要領に登場している「アクティブラーニング」にも通じます。

アクティブラーニングについては、「新しい学習指導要領が目指す姿。改定のポイントと考え方を解説」で詳しく解説しています。


1.プロジェクト・ベース学習(Project-based Learning)

子どもたちの学習はプロジェクトとして計画されて、生徒達は自分たちで解決したい問題を決め、解決のための計画、実行、発表の一連の活動に取り組む学習指導法です。子どもたちは学習の目標や意義を実感しやすくなります。
<プロジェクト・ベース学習>
①少人数のチームを組んで
②学習者自ら課題を設定し
③リサーチや実践を通して解決していく

「プロジェクト型学習」「総合学習」「実践学習」とも呼ばれていいます。
②の「学習者自ら課題を設定」するときの選ぶ課題は、

・現実に即している

・多くの人の興味を誘う

テーマを選ぶことがポイントです。
教師は、適切な事例の提示や、基本的な解説などの学習支援をします。
生徒 →主体
教師 →ファシリテーター(進行、サポート、誘導役)



2.プロブレム・ベース学習(Problem-based Learning)

プロブレム・ベース学習は、学習のなかに具体的な「問題」や「課題」を設定することで、子どもがその解決を目指して学びを深めていく学習指導法です。
<プロブレム・ベース学習>
①グループに分かれて
②学習者にあらかじめ課題を提示し
③解決に向けた方法やリソースをチームで意思決定しながら解決に至る道が一つでないことを学習させる

「問題解決学習」とも呼ばれていいます。 教師は、生徒がきちんと作業に取り組んでいるか、課題を理解しているかをチェックしながら導くファシリテーターに徹します。
生徒 →主体
教師 →ファシリテーター(進行、サポート、誘導役)


デザイン・ベース学習で優れた物をデザインする

デザイン・ベース学習は生徒が持っている既存の知識や発想を、デザイナーが使うメソッドを使ってものづくりにつなげ、そのプロセスから学習する作業です。
アイデアをとりあえず形にしてみて、他者からのフィードバックをもとに、より優れた物をデザインして行くことを目的としています。

デザイン・ベース学習に参加する学生は、課題を取り巻く要因がどのように機能しているかを明確に説明したり、その知識を応用する力がつきます。デザイン・ベース学習は時間がかかります。 さらに、生徒は方法論だけでなく失敗を恐れず挑戦するマインドセットの習得が重要です。




6.まとめ

【まとめ】わかる!STEAM教育(スティーム教育)。世界に広がる新しい学びの方法

情報社会(Society 4.0)に続く、ポスト情報社会といわれる新しい社会(Society 5.0)は、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会といわれてます。 この新しい時代に求められているのは、国や企業の開発競争に勝つことでも、テクノロジーで世界を満たすことでもありません。
この世界を、すべての人々にとって「優しい場所」に戻せるかです。

次世代を支えるリーダーは、文系か理系といった二項対立的な枠組みを超え、 自分で設定した課題に対して、テクノロジーを使いこなすだけでなくクリエイティブな発想も駆使して試行錯誤するマインドセットが求められるのです。



参考書籍・記事等

世界を変えるSTEAM人材 シリコンバレー「デザイン思考」の核心 (朝日新書)

STEAM教育を受けた人材にはどんな共通点があるのか。どうしてSTEAM人材はこれからの社会にとって必要になるのか。STEAM教育の先端をいくシリコンバレーのSTEAM人材やSTEAM教育の実例を交えながら、これからの目指す社会に適合する人材とはどんな人材かを解説されている本です。STEAM教育を知る上で必読の一冊です。

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