こういった疑問に答えます。
ネットや本などで見ても断片的な情報だったり、ひとくくりにされた情報だったりして「結局、具体的に何のこと?」とはっきりしないままという方は多いかと思います。僕も最初は「2020年教育改革」って、大学入試の方法が変わることを指しているものだと思って、ずっと誤解していました。
そこでこの記事では、「2020年教育改革」が実は2つの大きな改革からなっていること、それぞれには新しい時代を生きる子供たちに必要なポイントがあることを分かりやすく解説します。
この記事を読めば、「2020年教育改革」で何をしようとしているのか、その概略を把握することができます。
本記事の内容(目次)
改革の1つ目は学校教育の内容が変わることです。
学校教育の内容は、学習指導要領によって決められます。
学習指導要領というのは下記のものです。
学習指導要領とは何かについては、「学習指導要領とは何のためにあるのか?国と学校と教育の関係についてわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
改革の2つ目は大学入試の内容が変わることです。
大学入試の改革については下記の流れで決められました。
・教育再生実行会議(第2次安倍内閣での教育提言を行う私的諮問機関)が
・2013年(平成25年)10月31日に提言
・高等学校教育の質の確保と向上を目的として
・「大学入学共通テスト」として実施される
2020年度が実施開始年度となり、2021年度の大学入学者選抜から実施されます。
※見送&延期になりました。
学習指導要領は1947年に初刊行されて以来、
約10年に一度全面改訂されてきました。
・初刊行:1947年(昭和22年)
・第1回全面改訂:1951年(昭和26年)
・第2回全面改訂:1958年~1960年(昭和33~35年)
・第3回全面改訂:1968年~1970年(昭和43~45年)
・第4回全面改訂:1977年~1978年(昭和52~53年)
・第5回全面改訂:1989年(平成元年)
・第6回全面改訂:1998年~2000年(平成10~11年)
・第7回全面改訂:2008年~2009年(平成20~21年)
・第8回全面改訂:2017年~2018年(平成29~30年)※新学習指導要領
学習指導要領の変遷については、「学習指導要領の歴史!改訂による教育の移り変わりを時代背景とともに解説!」で詳しく解説しています。
新しい学習指導要領には、
学校で学んだことが「生きる力」になって欲しい
という願いが込められています。
この「生きる力」を育むという目標は、1998年(平成10)第6回目の学習指導要領全面改訂の時から引き継がれています。
社会が急速に変化して予測困難な時代になっても、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、判断して行動していく力がこれからの子ども達には求められます。
その為、新しい学習指導要領では社会の変化を見据えた、「新しい学び」への進化を目指しています。
それが下記の3つ
①何ができるようになるか?
②どのように学ぶか?
③何を学ぶか?
という考え方です。
「生きる力」を子供たちに育むため、「何のために学ぶのか」という学習の意義を共有。新しい時代を生きる子供たちに必要な「3つの柱」を育みます。
・学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等の養成」
・生きて働く「知識・技能の習得」
・未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等の育成」
このような資質・能力を育むため、
・どのように学ぶか?
・何を学ぶか?
が見直されました。
※新しい学習指導要領の “ポイント” はここです。
「主体的な学び」になっているか
「対話的な学び」になっているか
「深い学び」になっているか
という視点で学習過程を改善していきます。
この「主体的」「対話的」「深い」学びを「アクティブ・ラーニング」と言います。
アクティブ・ラーニングの視点では授業を下記のように改善します。
ただ話し合ったり、発表したりするのではなく、子ども達の頭の中が「アクティブ」に働いているかという視点を持ちます。
アクティブ・ラーニングでは下記のような学び方を実践していきます。
・発見学習
・問題解決学習
・体験学習
・調査学習
・グループワーク
・ディベート
・教室内でのグループディスカッション
知識の量を削減せず、質の高い理解を図ります。
そして、新しい時代に求められる資質・能力を育成します。
小学校、中学校、高校の教科・科目等の新設や目標・内容の見直しがされました。
小学校
外国語活動(3、4年)
教科としての外国語(5、6年)
特別の教科 道徳
中学校
特別の教科 道徳
高等学校
理数
総合的な探究の時間
新たに取り組むことや、これからも重視することは下記の通り
・プログラミング教育
・外国語教育
・道徳教育
・言語能力の育成
・理数教育
・伝統や文化に関する教育
・主権者教育
・消費者教育
・特別支援教育
新しい学習指導要領については、「新しい学習指導要領が目指す姿。改定のポイントと考え方を解説」で詳しく解説しています。
大学入試は、今までの「センター試験」に代わり「大学入学共通テスト」が導入されます。変更内容は以下を予定していましたが延期になりました。
大学入試センター試験
・マークシート式
・英語:2技能評価(聞く、読む)
↓
大学入学共通テスト
・マークシート式 + 記述式(国語・数学)※見送り
・英語:4技能評価(聞く、読む、話す、書く)※延期
※英語の4技能評価に民間資格・検定試験を活用する※延期
英語4技能評価延期について
(参照:令和元年10月09日:文部科学省「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入試英語成績提供システム運営大綱の廃止について(通知)(大学向け)」より)
記述式問題見送りについて
(参照:令和元年12月17日:文部科学省「萩生田文部科学大臣の閣議後記者会見における冒頭発言」より)
上記の「見送り」「延期」になった件ですが、文部科学省では、「大学入試のあり方に関する検討会議」ということで議論を開始しております。
文部科学省としては,高大接続改革そのものや,思考力・判断力・表現力や,英語によるコミュニケーション能力を育成・評価することの重要性は変わるものではないと考えています。
検討会議においても,これらの重要性は踏まえた上で,
・入学者選抜と高校教育や大学教育との役割分担をどう考えるか
・どこまでを入学者選抜で問うか
・大学入学共通テストと各大学の入学者選抜との役割分担をどう考えるか
等について,率直な議論を行い,令和2年末を目途に提言をまとめていけるよう,検討が進められています。
大学入学共通テストの現状について
(参照:文部科学省「大学入試改革の現状について」より)
令和3年の実施はできませんでしたが、「思考力」や「英語のコミュニケーション能力」などは、社会に出ていく上での必要性は今後も変わらないため、なんらかの形で問われてくるのは間違いないのかと思います。
なぜ「2020年教育改革」が話題になっているのか?
もはや社会は10年前では考えられなかったような激しい変化が起きています。
社会の変化が激しさを増し、未来の予測が困難な時代では、子どもたちは変化に適応し、自らの人生をより豊かなものにしていく能力を身に着けていくことが必要となりました。
学習指導要領改訂の目的として下記のことが述べられています。
新しい学習指導要領では、学びの先の「生きる力」を育てることを目標としています。知識・技能の習得が目的ではなくて、どう活用していくか、どう課題を解決していくかということに教育の流れが変わってきました。
一方、大学入試にも学校教育と同じように変革の波が訪れています。
安倍首相は、2013年(平成25年)1月に首相官邸(内閣府)に「教育再生実行会議」を設置しました。有識者を集めて開かれているこの会議で安倍総理は、冒頭のあいさつで次のように述べました。
大学入試の在り方は、大学教育、初等中等教育の双方にも与える影響が大きく、国民の関心の極めて高いテーマでもあります。
逆に言うと、大学入試に過度にエネルギーを集中せざるを得ないことが、我が国の教育の問題点でもあると考えられます。
子どもたちの能力を最大限引き出し、これからの時代に求められる力を育成するために、幅広い観点から御議論いただきたいと思います
つまり、大学入試だけが教育の目的ではなくて、教育を通じて必要な資質・能力を育成していくことが大切であり、新たな時代を見据えた教育再生が必要だと述べています。
上記のような流れもあり、2020年は教育改革の年、教育業界の転換期を迎える年だと言われるようになり話題になってきました。
2020年教育改革は、大きく2つの改革から成ることを説明しました。
そして、この教育改革が生まれた背景は、社会の変化が激しさを増してきている中で生きていくためには、「生きる力」を育てる教育が必要で、知識や技能の習得が目的でなく、それをどう活用していくかが必要になる。一方で大学入試の存在にも変革が迫られているということでした。
教育改革の一つ「学校教育」では、学校で学んだことが「生きる力」になって欲しいという願いのもと、「新しい学び」について説明しました。
教育改革のもう一つ「大学入試」では、「思考力・判断力・表現力」が重視されるようになってきましたが、2021年の入試では見送り・延期となりました。
2020年は教育の大きな転換期となります。
今の子ども達が、「生きる力」を身につけ社会で活躍できるよう、家庭や学校、あるいは社会全体で応援してあげられる世の中になってくれることを望んでいます。
参考サイト・参考書籍等